【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~



「一条製薬研究所」


「えッ?!」


「………」


「何故、そんなところに私は連れて来られたの?」



驚きに足が止まってしまった。


しかしそんな私を気にする事なく、桐生先輩は歩いて行く。



何も答えようとしてくれない先輩に苛立ちが募る。




そう言えば今はまだ、体育祭が学園で行なわれているはずだよね?


学園の生徒である桐生先輩と私が、こんな所でのんびりとしていても良いのだろうか?



って言うかそんな状況下で、私と桐生先輩がここにいる意味は?


疑問が後から後からたくさん沸いてくるのに桐生先輩は一向に立ち止まってはくれない。


それどころか私の声など聞こえていないかのように、無言のままどんどんカプセルの方へと進んで行くのだ。




話す気など全くなさそうなその態度に諦めた私はソッと溜息をはき、桐生先輩の後を着いて行く事にした。