【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~



「夏目、車を出すからすぐに病院に行くぞ」


「すみません」


佐伯先生の言葉に痛そうに顔を歪めながら、静香殿が頷いた。


それにしても静香殿の顔からは、大量の汗が出ていて辛そうだ。


顔が歪み、歯を喰いしばっているのを見ると痛々しくて見ていられない。




「静香殿…」


静香殿の両手をギュッと握る。


わたしには手を握る事しか出来ないのか---



何も出来ない自分に腹立たしく思っていたところで、蓮殿がこちらをチラリと見てきた。


しかしすぐに目を逸らされたが、言いにくそうにしながらも口を開く。