【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~



「…静香…殿?」



わたしに背を向け両手を広げた静香殿が、軽い妙な音と共にそのまま地べたへと倒れ込んだ。


そしてみるみる内に静香殿の足元から、赤い血が広がってゆく。



消音されている銃で静香殿が撃たれたのだと、すぐに分かった。




「静香殿っ!」


「バカめ…。脅しで銃を使ったのに前に出てくるとは」



黒ヒョウの近くにいた男が黒い小型の銃を懐にしまい込むと、綾香殿を抱き上げている男のもとへと歩いて行く。




「大丈夫ですか?」


「…はい」



静香殿の前でしゃがみ込み問いかける。


痛そうに眉を寄せ頷きながら、微笑みをわたしに向けてきた。