【白虎SIDE】
『紅』を探す為に全てのクラスを片っ端からあたろうとまず手始めに、1-Sの教室から入った。
「赤いコンタクトを持っているヤツは名乗り出ろ」
そう言ったところで『紅』本人が名乗り出るとは思わなかったが、やはりと言うか何と言うか---
『紅』らしき人物が名乗り出る事はなかった。
『紅』…、
クラス内をグルリと見回しながらも脳裏に浮かぶのは昨夜、目の前で玄武と戦った紅。
その動きは月光に照らされていたからか幻想的で美しく、一つ一つの動きに魅せられ目が離せなかった。
まるでその空間だけが…、
異世界にでも迷い込んだかのような、不思議な感覚で俺はそれを見ていた。
あれはなんだったのだろう?
あぁ、あれこそが…、
演舞と言うものなのだろうか?
今、思い出すだけでも身体が震えるほど胸が熱くなってくる。
紅の動きは舞を舞うように優美に動き、そして玄武を叩きのめす。
戦いに魅せられた俺達は、その場にいる誰もが微動だにする事なくそれに酔いしれていた。
そして…、
俺の心は、『紅』に奪われた---
本当にあんな戦い方をするヤツを見るのは初めてで、今だ『紅』の戦いっぷりが頭から離れない。



