【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~



「金獅子、顔がニヤけてますよ」


チラリと俺を見ながら隣にいる時雨が、おもしろくなさそうに顔を歪めている。




「時雨、お前そうとう綾香に入れ込んでんだな」


「えぇ、綾香は私の全て。…誰であろうと綾香に近づく者は許しません」


「へー…。それはそれは」


「バカにしてるんですか?」


「そんな事ねぇーよ。…もしかすると俺と争うことになるかもしれねぇーかもよ?」


「…それって金獅子が綾香の事を」



背凭れに腕を置き、時雨に向けていた視線を上に向けた。