「女性の話しではありますが、マスターが楽しむような下世話な話しでもございません」
「つまんねぇーな。…あ、そうそう。以前、お前らが追いかけていた『紅』はどうなった?ここのところ、『紅』がこの町に顔を見せなくなったようだが」
『紅』…
綾香の顔が脳裏を掠めた。
あいつは自分の紅の瞳と母親の存在をこの町で探る為に、この町を彷徨っていただけだ。
俺がもうすぐ始まる体育祭の後に、それを教えてやると言ったから引っ込んだけ。
しかしそれをマスターに教える義理はないなと首を振った。
「この頃『紅』がこの町に現れないから、不良共が結構騒ぎ立ててるぞ」
「『紅』そんなに睨まれてんのか?」
「『紅』にはファンが多いんだよ」
ニッと笑ったマスターは話しが終わったとでも言うように、カウンターの奥へと引っ込んだ。



