【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~



いや、もう章平は黒服達に押さえ込まれていないのだから、この場で俺が暴れてもいいのだろう。


だが章平が注射を打たれた今、これからどうなるのかをまず見守らなければならない。


俺は苦しそうに悶えているその姿を、息を飲んで見守った。




ピクンピクンと力なく揺れる身体は、だんだんと動きも鈍くなっていってるような気がする。




「…ハァーッ。この男も第ニ段階までは持ちませんでしたか」


残念そうにそう呟く白衣の男を睨み付けた。




「なに言ってんだよ、テメッ…」


「真実を言ったまで。さぁ、次はあなたの番ですね…」


キラッとメガネを光らせこちらに視線を寄こすその男の横で、俺の親友がだんだんと呼吸も耐え耐えで苦しそうにしている。



それなのにこの男は顔色一つ変える事なく、俺に注射を打つための準備を始めていた。


俺はこの男に言いようのない殺意を抱き、ギリギリと唇を噛締める。