「そろそろ帰ろっか?」
「そうだな…」
そう言って私は良牙からゆっくりと離れた。
良牙に微笑みかけると良牙は照れた顔をしながらも微笑み、そして私に手を差し伸べてくれた。
私は初めて見る良牙の柔らかい笑みに、鼻がツンとするほど嬉しくて更に顔を緩めながら差し出されたその手を握る。
瞬間、何かを感じた---
はっとして良牙を見上げたけれど、そこにはいつもの表情の良牙がいた。
この感じは何だったのだろう?
不思議に思ったけれど良牙が歩き始めた事で、もういいや…と考えるのを止める事にした。
良牙の手の温もりが私の手に伝わってきて心地良い。
このままずっとこうして、良牙と一緒にいられるといいな。
穏やかなこの思いは良牙といる事で消えることはないと思っていたのに、それはつかの間の幸せだったようで…
波乱の幕開けだったのである---



