【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~



「遅い」


廊下の壁に寄りかかり、腕を組みながら睨みつけるように私を見る良牙の第一声がこれ。




「ゴメン。…あの机、もしかして良牙が持って来てくれたの?」


教室の中を見ると、朝とはうって変わって綺麗な机が自分の席にあった。



その机をチラリ…と見てからすぐに、良牙へと視線を向ける。





すると私をジッと見ていた良牙が、フイッとソッポを向いた。


そんな良牙に私は笑ってしまいそうになるのをグッとこらえる。




犬がいじけてるみたい---


ここで笑うと良牙はますますいじけてしまうのは分かっている。



だからここは我慢だ…と、肩を震わせながら耐える私。




「誰に叩かれたんだ?」


私の頬に大きな手を添えていじけた顔から一転、真剣な顔をする良牙に少しだけドキッとした。