【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~



「面白い…。私がアナタを見つけ出してあげましょう」


「ヘッ?」



スッと私に向かって歩いてくるその男---


リムレスフレームの眼鏡をクイッと上げ、そして私に微笑みかけてきた。



一見、真面目そうな出で立ちで不良グループに入るようには見えない黒い艶やかな長い髪を揺らすこの男は…、


この春から通い始めた帝星学園高等部、生徒会副会長の氷見時政だった。




いつもは冷ややかな視線で人を射るように見るその男の瞳は、今は何故か成りを潜めている。


裏のない笑みを浮かた副会長のいつもとは違う雰囲気に、目をパシパシと瞬きながらジッと魅入ってしまった。