【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~



「すごッ。朱利、大丈夫か?」


「大丈夫だよ、青治。…それにしても綾香、ちょっと女にしては力が強すぎだよね」


「………」


「…綾香?」



楽しそうな朱利とは反対に、時政先輩は凄く心配そうに私の名前を呼ぶ。




動揺…していたからなのだろうか?


私に伸ばされた腕の存在には気づかなかった。




「…く…れない?」


「…っ!」



その名にビクリと肩が揺れる。