「寂しーナー、寂しーナー…」


「え?
名残惜しいンですか?
里帰り気分だったンですか?」


「んーん。
ヒナとのバカンスが終わるから。
寂しーナー、寂しーナー…」


「…ソコ?」


由仁は歩く。
肩を落として。

日向も歩く。
呆れ顔で。

蝉の声が穏やかなハーモニーを奏でる、バス停までの道程を。

帰りは二人だ。
杏子はいない。

千鶴子の供養、今後の動向が不明瞭な瑠璃子のアフターケア、後藤の妻への上書き暗示…
その他諸々の事後処理を行うため、杏子はもうしばらくココに留まることになった。

もちろん孝司郎に構ってやるつもりはナイが。
むしろ、枯れればイイのにと思っているが。

『タダ働きだよ
全く、やってらンないよ』

なんてボヤいていた杏子だったが、その表情はどこか晴れやかだった。

18年前の後悔や心残りが、少しは払拭されたのだろう。

源翁庵は…

上を下への大騒ぎ
周章狼狽
てんやわんや

なんかそんなカンジ。

しょーがないヨネー?
主人二人が、同時に廃人化したからネー?