由仁の魔法が解けて正気に戻った年配の仲居は、どうかご内密に、と曲がった腰をさらに曲げて何度も頭を下げた。

最後に由仁が夾竹桃がある場所を聞くと、母屋にあるのでお客様にはお見せできません、と言って逃げるように去っていった。


「お年寄りに悪いコトしちゃったカナー?」


仲居の背中を見送った由仁が、フワフワ遊ぶ毛先を弄りながら苦笑した。

うん、オバーチャンにハニートラップは刺激的すぎたかもネ。

でも、あんなに派手に人違いされて、掴みかかられそうになったンだもん。

そりゃ真相を聞きたくもなるわ。

だけど…


「珍しいですよね。
オカルト系じゃないコトに、先輩があんなに食いつくなんて。
ナニか気になるコトでも?」


日向はいつもの様子に戻った由仁を真っ直ぐに見上げ、疑問を口にした。


「んー?
珍しくもナイでショー?
いつだってヒナには食いつきたいしー?」


「バカもほどほどにしやがってクダサイ。」


ますます鋭い眼差しで、日向は由仁を睨み上げる。

キタコレ。

あー… ゾクゾクする。
心まで丸裸にされそうだ。

ソレでいいケド。
彼女に隠すコトなんて、ナニもないから。