その頃空狐は、窓の外で三年一組の教室を覗き見ていた。
漏れ聞こえる声の主は、言うまでもなく由仁と樹。
「俺、カワイソー。
俺、カワイソー… ブツブツ…」
「…
ジン、おまえはナンナンダ?」
「寸止め食らった、カワイソーな俺デスケドー?」
「煩悩は置いとけ。
瞳の色が変わっていた。
顔に落書きが浮かんでいた。
おまえは、ナンナンダ?」
「落書き言うな。
俺、九尾の狐なンだってー。」
「…」
「あ、引いちゃったー?」
「いや… 腑に落ちた。」
「へ? なんで?」
「妲己、華陽夫人、玉藻御前…
で、おまえ。な?」
「ナニソレー?
酒池肉林とか興味ナイしー。
ヒナと二人で晩酌がイイー。」
「なるほど。
一年女子がいれば、世界は安泰というワケか。」
「ハハ、だネー。
だから…
今日は、ほんとありがと。」
「フハハ、崇めろ。
世界を救ったヒーロー様を。」



