「わぉ。
お人形さんだー。」


目を丸くした百合が、感嘆の声を上げた。
そして少女に向かって投げキッスをカマし、バチンと片目を閉じる。


「ヘーイ、一年女子!
ジンなんかやめて、オネーサンとイイコトしなーい?」


「なんだと?
百合、俺を捨てる気か?」


仏頂面の樹が、指でメガネの位置を直しながら口を開いた。

いつもクソ真面目な顔と口調なので、樹の冗談は非常にわかりづらい。

面食らって立ち尽くす少女を追い払うように、樹は軽く手を振った。


「一年女子、ジンは見ての通り取り込み中だ。
口説くなら出直してくれ。」


「イイじゃん。
せっかく勇気だして来たのに。
空気読んで、ちょっと席を外してあげよーよ。」


眉根を寄せる樹も、頬を膨らませる百合も、少女が『ペガサス(笑)』を落としに来たコトを前提に、会話を進めていく。

だって、そこそこの容姿の女子が由仁を訪ねてくる理由は、ソレ以外にはなかったから。

今までは。


「あ、お気遣いなく。
そーゆーンじゃないですから。
これっぽっちも、ハイ。」


少女はキッパリと言い切った。