猫に恋する、わたし



「よかったねー。羽生伊織と一緒にまわれることになって」


待ちに待った文化祭当日。

C組の催しは『おもてなしカフェ』と題して飲食企画に決まり、ドン・キホーテで買ったメイドもどきのエプロンを身につけながらわたしと菜々緒は接客することになった。

朝早くからクラス全員でチラシを配った成果が現れたのか、初日からお客の入りはまずまずで、教室内はほぼ満席だ。


「昼から竹内さんと交代してもらうことになったからよろしくね」

「相変わらず羽生伊織は文化祭でも社長出勤ですか」

「本当はライブは夜だから夕方来るって言ってたんだけど、わたしがしつこく説得したんだ。だから伊織君は渋々付き合ってくれる感じ」

「いいじゃん、それでも。莉子にとっては大きな進歩だよ」

「そうかな」

「そうだよ。楽しんできな」

「ふふ、うん」

「独り身のあたしは寂しくお客と楽しんでますよ。あーあ、せっかくの文化祭なのに悲しい」


そう言って菜々緒はオーダーのあったコーヒーをマグカップに注ぐ。

白い湯気が立ちのぼった。


「菜々緒は好きな人いないの?」

「いるわけないじゃん。いたら莉子に報告してるよ」

「そっか。できたら教えてね。わたし協力するから」

「おう、その時は頼んだ」

「ふふ」