「その…悪かった。つい、って言ったらあれだけど。嫌な思いしたろ。マジごめん」


深々と頭を下げる智充君をわたしは慌てて止めた。


「顔上げてよ。謝らなくていいから」

「でもこれ、たぶん学校で噂になると思う」


と申し訳なさそうに肩をすくめる智充君。


「…うん。でも大丈夫。わたし気にしないから」

「本当にごめん」

「いいよ。だってただ軽はずみにしちゃっただけなんでしょ」

「…」

「智充君?」

「軽はずみなんかじゃないよ」


え、とわたしは智充君の顔を見上げた。

まっすぐにわたしを捉えたその無垢な瞳に引き込まれそうになる。



しばらくの、間。





「俺…」






智充君が口を開こうとした時ーー。







「すいませーん」






一瞬、わたしは耳を疑う。



この声。



まさか。









振り返ると、彼がそこに立っていた。





「伊織君…」