猫に恋する、わたし



ガラスの破片が散らばる。



「…お前」彼の目色が変わった。



後悔先に立たず。

わたしをじっと睨みつける彼はとても怒っていた。

もう後には引けなかった。



「お姉ちゃん結婚するんだから、もういらないでしょ。そのリングも捨ててあげる」

「ーッ、痛えな、離せよ」


ピンキーリングを外そうとしたわたしを彼が払いのける。


「そんなにお姉ちゃんが好きなら、奪っちゃえばいいじゃない」

「何言ってんだ、あんた」

「どうせ奪う勇気ないんでしょ。だから他の女の子に逃げるんでしょ」

「あ?」

「わたしは、ずっと伊織君が好きだよ。今までもこれからも」

「…」

「でももうそんな中途半端な気持ちでわたしを振り回さないでよ!バカ!アホ!チビ!でくの坊!」








気が付けば、わたしは商店街を歩いていた。


部屋を出る時、彼は割れたフォトスタンドを静かに見下ろしていて、その目はとても悲しげに見えた。

わたしはとんでもないことをしてしまったのかもしれない。



ずっと我慢できると思っていた。


けれど彼の気持ちを知っていながらいつまでも笑っていられるほど、わたしは器用な女じゃなかった。



もうわたしと彼のカンケイはおしまいだ。