猫に恋する、わたし


沈黙が漂う中、ゲームの音だけがやけに響く。


明らかに不機嫌な彼。

メールをすぐに返さなかったわたしも悪いけれど、そんなに怒ることじゃないと思うのに。


でも彼に弱いわたしは何も言えなくて。

ただ「ごめんね」とだけ繰り返し謝ってしまう。



すると彼がゲームを中断して、わたしを見た。


「なんで謝んの」

「え、だって…なんか怒ってるみたいだから」

「別に怒ってない」

「じゃあどうして」

「…」

「”来なくていい”なんて言うの?」


少しの、間。


「別に…」彼は呟くようにいった。「邪魔したら悪いかなと思って」

「邪魔?」

「あんたってTwitterやってたっけ」

「え、Twitter?」急に話が変わり、わたしは戸惑う。

「近藤がさ、面白いつぶやき残してんの見た?」

「…わたし、Twitterやってない」

「あっそ。じゃあいいや」

「近藤君がどうしたの?」

「見たい?」

「…うん」

「じゃあ読み上げてやるよ」


わたしの目の前にスマートフォンを差し出す彼。


「”意外なカップル発見!ただいま映画館でラブラブnow!”」


ぎょっとした。

スマートフォンの画面には画像が表示されていて、最初は薄暗くてよく分からなかったけれど、よく見るとわたしと智充君が写っていた。

たぶん、映画館内で撮られたものだ。

クラスメイトがいたなんて気が付かなかった。


「あんたってやること大胆なんだな」


彼がスクロールしてみせたもう一枚の画像に、わたしは目を疑う。