「ごめんなさい。今日はここで解散でもいい?」
「いいけど…何か用事?」
「うん。人と会う約束してるの」
「その人ってさ…」
「え?」
「いやなんでもない」と智充君は首を振った。
「また誘ってもいい?」
「もちろん」
「メール送るよ」
「うん。じゃあまた」
「おう、またな」
智充君と別れ、わたしは急ぎ足で彼の家に向かう。
スマートフォンの電源を入れると一時間程前に一件のメールが届いていた。
彼からだ。
《午後からって何時だ》
わたしはすぐにメールを送る。
《今から行くね》
すると、彼から予想もしない返事が返ってきた。
《来なくていい》
えっ。思わず足を止めた。
《どうして?》と聞いたものの、それからメールは来ない。
怒ってるのかな。
彼とのデートを楽しみにしてたのに、ここで引き返すなんてやだ。
わたしは彼に怒られることを覚悟して、彼の家の最寄りにある駅行きのバスに乗り込んだ。


