猫に恋する、わたし


冒頭からキスの嵐。

目のやり場に困っていると、智充君も気恥ずかしいのか落ち着かない様子にフッと笑ってしまう。

ありきたりのラブストーリー。

やがて中盤に差し掛かったところで、わたしは段々と重くなってきた瞼を擦る。

昨夜の寝不足がたたり、そのまま眠ってしまい、気が付くとエンディングソングが流れていた。


「つまらなかった?」


智充君の声に寝ぼけ眼だったわたしはハッと目を覚ます。


「ご、ごめん!寝ちゃった」

「昨日寝てないの?」

「…うん」

「そっか」

「ほんとにごめんね!チケット奢ってくれたのに」

「いや、平気。映画より寝顔を見てるほうが面白かったから」

「…なにそれ。もしかして口でも開いてた?」

「うん」

「嘘!」

「嘘。チューしたくなるぐらいかわいかった」


固まるわたし。


「…それも嘘?」

「さーどっちでしょう」


そういって智充君は意味深な笑みを浮かべた。


不覚にもどきり、としてしまう。

だって突然、智充君が変なことを言うから…。



「この後どうする?メシ行く?」


え、とわたしは我に返る。


時計を見ると、すでに正午を過ぎている。

待ちくたびれて怒っている彼の顔が頭に浮かんだ。