ふいに、彼に貸していたあたしのマフラーが飛んできた。


「それ、少しも防寒具になんねえ」


また、「ごめんなさい」。

でもにやけた口元が隠せなくて。


「なに笑ってんだよ、キモい」

「ごめん」


あたしはまた謝る。




ーあんたが来ると思ったから。


彼にとって何気ない言葉でも、わたしにとってはすごく嬉しくて。

少しでも必要されてるんだって感じる。


パシリ扱いでも、世間から見たら都合のいい女でも、彼という恋の罠(ドラッグ)にはまってしまうんだ。


救えない、わたし。







昼食の時間になると、食堂はにぎやかになり、食券販売機にたくさんの列が並んでいる。

前もって買っておいたわたしは二枚のうちの一枚を後からやってきた彼にこっそりと渡した。


「大盛り定食でいいんだよね」


ん、と受け取る彼。

そそくさと彼の元を離れ、菜々緒と一緒に昼食を食べていると、わたしの隣にいた別のクラスの女子グループが突然騒ぎ出した。

何事だろうと思い、うどんをすすりながら目線を上げると、思わぬ姿に、わたしはむせてしまった。