今朝のことが、まるで夢みたい。


今もまだ彼の温もりがわたしの中に残っているのに。


あの幸せは一体どこにいってしまったのだろう。






「この寒い日によく外にいられるな」


放課後、わたしはメールを送って彼を屋上に呼んだ。

ペントハウスで寝転がっていたわたしを睨みつけ、彼は不機嫌そうな顔で隣に腰を下ろす。


「ごめんなさい。一緒に夕焼け見たくて」


彼の眉間に皺が寄る。


「そんなつまんねーことで俺を呼んだん、マジうざい」


それでも来てくれたことが少しだけ嬉しかったり。


「今日予定あった?」

「別にない」


わたしは安堵した。

あのキスの後だから谷口さんのところに行ってしまうのが怖くて、適当な理由をつけて彼を呼んでしまった。


自分でも矛盾していると思う。


昨日、彼が谷口さんではなくわたしを選んでくれたことに浮かれて、どこか優越感に浸っていたのかもしれない。

、、、、、、、、
こういうカンケイを選んだのはわたしなのに、割り切れないでいる自分が情けなくていやだ。


「寒…」


フーフー、と猫舌の彼は食堂の自動販売機で買ってきた缶コーヒーに息を吹きかけて冷ます。


ちょっと前までその愛しく思える仕草もただ見ているだけで満足だったのに。

欲は増すばかりだ。