「さっきの自業自得ヤローって何の話?
」
よほど気になっているのか智充君はその質問ばかりしてくる。
「菜々緒に聞いてよ」
「もしかしてあの男が関係してる?」
「あの男って…」
「羽生伊織」
「なんだ、最初から聞こえてるんじゃないの」
「いや自業自得ヤローの意味は分からなかった」
「んー、要はアンチ羽生伊織イコールってこと」
智充君は納得したのかしていないのか微妙な顔をした。
「智充君もアンチ羽生伊織?」
「えっいやそこまではいかないけど…」
「けど?」
「まあ似たようなものだな」
「好きではないってこと?」
「そんなところだな」
「菜々緒は智充君のこと、アンチ羽生伊織の中では別格って言ってた。どういう意味だろ」
「上崎、そんなこと言ったん?」
「うん。ねえどういう意味?」
「なるほどねー」と智充君。「いずれ分かるよ」
意味ありげな笑みに、わたしは疑問に感じながら深くは追求しなかった。
というのも渡り廊下の向こうが気になっていたから。


