目が覚めると、長いまつげが一番に目に入った。
わたしに寄り添うように大きな体を丸めて、スースーと寝息をたてる彼。
本当に猫みたい。
今この時間はわたしの幸せな時間。
無防備な彼の寝顔を何度もわたしのアルバムの中にストックしては、その度に顔がほころぶ。
起きたらまたいつもの無愛想に戻るのかと思うと、このままずっと寝ていてほしいぐらい。
でもやっぱりそんな訳にはいかなくて。
彼の機嫌を損ねないためにももう帰らなきゃ。
彼が起きてわたしがまだ居座っていたら、「うざい。早く帰れ」なんて言われたりするかも。
せっかくの幸せな気分なのに、どうせならこのまま持ち帰りたい。
後ろ髪引かれる思いでわたしはベットから降り、制服を着て、テレビ台の上にあった鏡の前で身だしなみを整える。
ふと、目に入ったあの写真。
鏡の後ろに隠れるようにして立っているそのシックなフォトスタンドは、相変わらず埃を被っていない。
「ん…」
彼の声がした。
ベットを見ると、彼はまだ夢の中ですやすやと眠っている。