季節外れの花火が、夜空に儚く散る。

わたしはお姉ちゃんが帰り際、言ったことを思い出していた。




ー彼、少し変わったね。


ーそう?


ー私と付き合っていたときはあんなふうに笑う子じゃなかった。


ー…ねえ、お姉ちゃん。


ーうん?


ーお姉ちゃんって本当はどっちが好きだったの?


ー…どうして、そんなことを聞くの?


ーなんとなく。



お姉ちゃんは少し考えて、答えた。



ー分からない。


ー…それって、伊織君のことが好きだったかもしれないってこと?


ーもう昔のことよ。今、一つだけ確かに言えるのは私の選んだ道は間違ってなかったってこと。



そう言って微笑んだお姉ちゃんの顔が忘れられない。




遠くにしまったはずの罪悪感がむくむくと起き上がって、わたしの中を貪るように駆け回る。

まさか、お姉ちゃんも彼のことを好きになっていたかもしれないなんて。

それならあの時、わたしがあんなことを言わなければ、彼の想いは報われていたかもしれないんだ。



、、、、、、、
みにくいわたしがいなければーー。









「…ごめんなさい」



彼と目が合った。ため息の声。



「謝るぐらいなら最初から言うなよ」



わたしはかぶりを振った。「それもなんだけど、そうじゃなくて…」


「あ?」

「わたしのせいなの」


下を向き、拳を強く握りしめる。


「…」

「お姉ちゃんと伊織君が別れたのはわたしがあんなことを言ったから」