ライブは大盛況に終わり、夜を迎えると文化祭のメインとも言える花火が打ち上げられた。
窓から聞こえる花火の音と大歓声。
気分がのらなかったわたしは一人教室に残った。
机にうつ伏せていると、突如首の後ろに冷たい感触がして、思わず飛び上がる。
「….うわひゃ!」
振り返らなくても、タバコの香りで犯人が誰かなんてすぐに分かった。
「なにオチてんの」
「…別にオチてないよ」
「あっそ」
カチン、と二本のラムネ瓶を乾杯するとその一本をわたしに差し出した。
「とりあえずお疲れ」
「ありがとう…」
よく冷えたラムネの味は甘く、どこか懐かしくて、喉の奥で炭酸が抜けていくのが心地よかった。
「それで」
「えっ」
「怒ってみえるのは俺の気のせい?」
「…」
「ま、俺には関係ねえか」
わたしはうつむいた。
ライブが終わってから今も、彼の顔を見ることができない。
「第一さ、俺のみえるところにいるのは結構だけどあのノリの悪さはなくね?あんた一人だけだったよ。俺が歌ってんのにその仏頂面」
「う、嘘ばっかり」
「あ?」
だってライブの間、彼はずっと上の空だった。
わたしのことなんて一度も見向きもしなかったくせに。
「頭の中はお姉ちゃんのことでいっぱいだったんでしょ」
彼の表情が曇る。
わたしは言ってしまってから後悔した。
「なんであんたにそんなこと言われなきゃなんねーの」
彼の口調に怒気が交じっていた。


