スタッフが全員帰った後のお店は、昼間の賑やかさがまるで嘘のように静かだ。


俺はいつも一人で店に残る。


初めの頃はこの状態が苦手だったが、最近はすっかり慣れてしまった。


書類の整理も終わったし、そろそろ帰るか。


パソコンの電源を落とすと、くっと背伸びをした。


それにしても、朝日のヤツ…。


招待客のリストを出せって言ってるのに、なかなか出さねぇよな。


ありさの方はもう出ているのに。


連絡してみるか。


その時だった。


俺の携帯が鳴った。


「はい」


『夏樹君?』


「ありさ?」


どうしたんだ?こんな遅い時間に。


『夏樹君、今から会えないかな?』


え…?


「でもありさ、もう11時だぞ」


『ほんの少しの時間でいいの。お願い…』


ありさのか細い声に、俺の心がざわめく。


「今、家?」


『うん』


「わかった。15分で行く」


俺は店の戸締まりをして、車に乗り込んだ。