「沙希先輩。もう休憩入りましょうよ~」


「ちょっ、そんな事言うなら早くそこ片付けなさいよ!」


「は~い」


まったく!最近の若い子って、ホントだらしがないんだから。


気がつけばあたしも4年目に突入し、こうやって新人の指導をする立場になっていた。


「やったぁ~。やっと休憩だ。今日のまかないは何かな~」


「ちょっと美香!アンタの頭ってそれしかないの?」


「だって、お腹が空いたんだもの~」


この子は松林美香。


今年入った新人だけど、あまりやる気がなくて、すごく手がかかるのだ。


「二人とも、お疲れー」


「谷口さん、お疲れ様です」


「どうしたの?柚木。疲れた顔して」


「だって、美香にすごく手がかかるんだものー。ホント教育係って疲れますよね」


あたしがそう言うと、谷口先輩がクスクスと笑った。


「あの子、昔の柚木にそっくりよ。これで私の大変さがわかったでしょう?」


「えーっ!全然似てませんよー!」


全く失礼しちゃう。

 
あたしの方がずっと仕事出来たわよ。


今日のまかないは、エビのクリームパスタだ。


林君が居なくなってからは、新しく入ったコックがまかないを作るようになったけど、この子の料理を食べていると、林君がいかにすごいコックだったか身に沁みて感じるようになってしまった。


林君と由梨、どうしてるかな?


元気にしているのかな。
 

そんなことを思っていたら、チリンとお店の入口の扉が開いた。