「夏樹さーん、はやくー」


「ちょっ、待てよ。お前速過ぎる」


真っ青に晴れた秋空の下、俺は広い公園のジョギングコースを走っていた。


おかしい…。


俺の予定ではこんなはずじゃなかった…。


今朝は遅くまで寝て、起きたら由梨をもう一度抱いて、ベッドでアンニュイな朝を過ごすつもりだった。


ところが由梨ときたら、朝早くに起きて洗濯を済ませ、朝食を作っていた。


俺が起きると、普段朝食をとらない俺に食わせて、こうして公園でジョギングまでさせている。


それにしても、アイツはやたらと足が速い。


ジャージ姿がやけに似合うし、まさに体育会系の女。


「ちょっ、もう休憩…」


俺は近くの芝生に座り込んだ。


ここんとこ運動不足で、いきなり何キロも走れるはずがない。


「えー、もう終わりですかー?」


余裕な顔で由梨が問いかける。


「俺はお前みたいに若くないんだ」


「そんなおじさんみたいな事言わないでくださいよ」


呆れた顔をした由梨が、俺の隣にちょこんと座る。


俺は芝生にゴロンと寝転んだ。