朝日さんのマンションを出ると、さっきまで降り続いていた雨は止んでいた。


夏樹さんは50メートルほど離れたコインパーキングに車を停めていたようで、ずぶ濡れになっていたのは傘を持っていなかったからだとわかった。


運転する間も、夏樹さんは私の手を握ったまま離さない。


特に会話はないけれど、私の心は温かかった。


しばらくして、私達は夏樹さんのマンションに到着した。


「由梨、俺シャワー浴びて来る。身体が冷え切ってるから」


部屋に着いた途端、夏樹さんはシャワーを浴びに行った。


大丈夫かな?風邪をひかなければいいけれど…。


私はリビングの電気をつけ、昨夜の状態のまま窓に向いたソファに腰掛けた。


まさかまたここに来られるとは思ってなかったから、嬉しくて涙が出そうになる。


私はさっきの夏樹さんの言葉をひとつひとつ思い返していた。


好きって言ってくれたこと。


最初から気になっていたということ。


手放さないって言ってくれたこと。


それらをゆっくり噛みしめる。


私、こんなに夏樹さんが好きだったんだ…。


こんな気持ちは初めてで、戸惑うけど。


なんだかウキウキもしてる…。


どうしよう。


こんな自分が、ちょっぴり恥ずかしい。