成り行きだったとはいえ、あのメンバーで一緒にボウリングをしたなんてとても奇妙な事だったなと、家に帰ってあらためて思った。


私の会社の上司であり、同居人でもある社長。


その社長が片思いしているありささん。


ありささんの恋人の朝日さん。


そして朝日さんを好きな私。


よくよく考えてみると、私達4人の関係ってとても複雑だと思う。


あの日以来、社長の様子が少しおかしい。


会社では普段通りだけど、家にいる時はとても静かだ。


家ではすれ違いが多いから、そんなに会う機会もないけれど、会ってもからかわれたりする事はなくなった。


平和と言えば平和だけど、社長がイキイキしてないのは、なんだか少し心配だった。


そんなある日の事。


「はー、ヒマねぇ…」


「だね…」


今日は夕方から雨が降り始めて、ご予約のお客様のキャンセルが相次いだ。


予約なしで来られるお客様も、当然ながら数人しかおられなくて、私と沙希は厨房でダラダラと過ごしていた。


シェフの橋本さんもヒマなようで、私達に新メニューの味見をさせてくれたりしていた。


最後のお客様を見送ると、私達はいつもより少し早めに店を閉める事になった。


「じゃあねー、お疲れー」


早めに帰れるのが嬉しいのか、沙希はあっと言う間に着替えてお店を出て行ってしまった。


厨房スタッフさん達も、早々と後片付けをして帰って行く。


私も早く帰りたいけど、こんな雨の中、しかも夜間に自転車を走らせるのは危険だから、雨が小降りになるのを待つことにした。