「じゃあ………しまーす!」
湖の方に歩き始めながら、
少しおどけたように言う音色に
私たちは軽く笑う。
楽しみだな、音色のスター♪
でも……あれ?
音色は、私たちのすぐ近く、
木々たちが立っている辺りで止まった。
音色のスターは、
近くに人がいても大丈夫なのかな?
そんな疑問を持ったのは、
私だけではないようで、
火焔と氷華も不思議そうな顔をしている。
音色は、私たちをもう一度見ると、
フルートを口元にそっと持っていった。
「すぅ………。」
シンッと静まっている空間に、
音色の息を吸う音が響いたかと思うと
フルートから、勢いよくメロディーが
流れ出した!
その音は暖かく、けれどどこか寂しい感じの
するメロディーだった。
「わぁ……。」
「すごいわね…………。」
「キレイ……だな。」
そんな、ありきたりの感想しか出ない私たち
とは裏腹に、木々の奥には
一つ……また一つと、黒い影が増えていく。
あれ………何なんだろ?
「………?」
その影に気付いた音色は、
フルートを引き続けながら、
一歩ずつ影に近付いていった。
