チッと、軽い舌打ちが聞こえた。
それをしたのは、紛れもなく先生で。
遠くからでも分かるほど、
苦々しい表情をしている。
まぁ、相手の要求多過ぎだもん…。
私も釣られるように苦笑いをする。
周りで、まだこそこそと話している皆も
似たような顔をしていることだろう。
先生は、そのまま少し考えるような
素振りを見せた後。
ゆっくりと口を開いた。
「………いいだろう。
もう一つの要求って、何だ」
「こいつら全員の解放だな」
即座にそう切り返した、リーダーっぽい人。
その言葉に皆、驚きを隠せない。
そして、柊先生の表情が
一層苦々しいものになった。
「………究極の選択だね。
解放しないと、情報が手に入らない。
けど解放したら、また同じことが
起きるかも知れない」
「そのとおりだね。
………あのリーダーの人、頭の回転が
すっごく早いみたい」
ぼそっと呟いた私の言葉に反応したのは音色。
その眉間にはしわがよっていて、
可愛い顔が台無しになっていた。
「………約束しよう。
知っている情報を全て吐いたら、
お前ら全員を解放してやる」
先生の声がラボの中に響く。
同時に、黒ずくめの人たちを挟んだ
向こう側にいる先生たちが
慌てているのが見えた。
若い先生たちは、
柊先生に抗議しようとしている。
しかし、校長先生が止めているみたいだ。
………どれだけ信頼されているんだろう、と
全く関係ないことが頭に浮かぶ。
だが、聞こえてきた低いテノールの声によって
すぐに思考が中断させられた。
