「なぁ、花音。 俺に聞かせてよ。花音の歌。 俺、一度も聞いたことない」 聞いてみたい。 花音の夢。 夢の音。 「えっ!恥ずかしいよ」 「いいじゃん!彼氏の特権!」 俺の言葉に、また顔を赤くする花音。 いちいち反応が可愛い。 「……わ……私、へたっぴだよ?」 「いいよ。聞かせて?」 「うん……。分かった」 花音はしぶしぶ承知して、椅子に座り、目の前のピアノで、音色を奏でる。 そして、スゥッと息を吸って……。 楽しそうに、幸せそうに、 キレイな声で、 君だけの音で、 その歌を歌いだした。