───……この1冊のノートから、 始まったんだ ───……。 「質問していい?」 俺がそう言うと、彼女は胸ポケットに入ってたシャーペンを取り出した。 そしてコクッと頷く。 それは、〝いいよ〟っていう合図。 「君の名前、教えて?」 ずっと知りたかったんだ。 水をかけてしまったのにちゃんと謝れなくて。 それだけじゃない。 感謝の言葉を伝えたい。 あんな素敵なピアノの音を、聴かせてくれてありがとうって。