右も左も分からない土地で、あたしは涙を流しながら走る。
空車のタクシーを止めて急いで乗り込んだ。
誰かに追われているわけでもないのに、息を切らしているあたし。
涙で視界が歪んでいる。
この脱力感はなに?
胸に空いた穴はなに?
千絵は泣いているのかな?
気になることは千絵のことばかり。
タクシーの中が静かだ。きっと運転手はあたしに気を使っているのだろう。
声を漏らして泣いているのだから。
「あの、お客様?
どちらまで行かれますか?」
今はあそこに行きたい。
貴方と出逢った場所でもあるところ。
あたしの大好きな場所。
「海が見える場所まで…」
海を見ると落ち着くの。貴方と始まった場所だからかな…
貴方と出逢っていなかったら、千絵を授かることはなかった。
恋なんて、愛なんて。
あたしには興味がなかった。
どうせ終わりがあると思っていたから。
けど貴方と出逢って、
恋を知って、愛を知って、大切なことを沢山教えてもらった。
光、あたしは貴方と出逢えて幸せすぎました。
でも「期間限定」という言葉に悩まされたときもあって、貴方を想って泣く日々も沢山あったけど、今は心の底からこう想います。
愛している。


