「紫乃さんはあたしの存在が気にくわないでしょうね…。あたしは光と浮気していたのだから…」


「もし私が光だったら、きっと明菜さんと浮気をしていたはずです。
初めて今日会いましたけど、明菜さんは魅力的な人です。それに千絵ちゃんも可愛くて…羨ましい」



こうあたしの第一印象を語る紫乃さん。
あたしなんか邪魔な存在だと思っていた。
勝手に隠れて浮気をして、子供まで作って、産んで。


紫乃さんは許してくれないはず。
でもなぜそんなことを言うの?



あたしは真っ直ぐ紫乃さんを見つめて、口を開いた。



「なぜ千絵を引き取ることに納得をしたんですか?普通なら拒むはずです。なぜ…千絵を育てようと決心したんですか?」


また、涙が出そうになる。
けどそこは女の意地として、ぐっと堪えた。



「私、子供が出来にくい体なんです。ずっと不妊に悩んでて…。光と愛し合ってもなかなか出来なくて…私、子供が大好きなんです…」



この人はあたしとよく似ていると、この時思った。
それと同時に、この人なら千絵を幸せにしてくれると思ったの。



「…紫乃さん、
千絵を幸せにしてあげてください…」




これ以上、なにも言えなかった。
言葉が浮かんで来なかったの。



紫乃さんもなにかに悩んでいて、あたしも体の弱さに悩んでいて、どうして神様は平等に幸せを与えないのだろうと思った。



千絵、強く育ってね。


そしてあたしのことを忘れないでね…。