光の奥さんはあたしの憧れだった。
奥さんになりたかったけれど、なれないのが現実。
だってこの人がいるから。
「ただいま、紫乃。
明菜と千絵を連れてきたよ」
言葉を失ってしまう。
紫乃さんがあまりにも美しすぎて。
身長はあたしより少し低めだろうか。
細身の華奢な体に、可愛らしいエプロン。
そして白く美しい肌に、さらさらな長い髪の毛。
誰もが憧れる存在だろう。
今ようやく分かった気がする。
なぜカリスマ主婦として多数の雑誌に掲載されていたか。
雑誌で見るより、遥かに美人だ。
光が惚れるのも無理はない。
それに比べてあたしは…
よそ行きのワンピースなんか着ちゃって…
紫乃さんに勝てるわけないのに。
バカみたい。
この場から逃げ出したい気分だった。
「こんにちは。明菜さん、千絵ちゃん。遠くて疲れたでしょ?どうぞ、中へ」
笑顔を見せる紫乃さん。その表情に少しだけ救われた気がした。
どうして怒らないの?
あたしの存在、気に入らないでしょう?
ひっぱたいてくれたら、あたしは光を諦めるかもしれないのに…
部屋の中へと案内されるあたしたち。
そこでまたあたしは惨めな思いをする。


