あたし、千絵を産んで本当に良かったと心の底からそう思うの。
「着いた、ここだよ」
光が微笑みながらこう言って、車から降りた。
光の秘書の人がドアを開けてくれて、千絵の手を引っ張り、あたしたちも車から降りる。
目に飛び込んできた光景は、思わず口が開いてしまうくらい、驚く光景だった。
そこにあったもの。
それは建前が立派な、タワーマンション。
まるで高級なホテルのようで、目が輝いてしまう。
「光…ここは?」
「オレの家だよ。さぁ、行こう!」
光に肩を抱かれながら、高級マンションに入っていく。
一歩足を踏み入れるだけで、お姫様気分になるのはあたしだけだろうか?
あたしが田舎娘だから、光にとって珍しくないものを珍しいと思ってしまうのかな。
ふと、光の言葉に違和感を感じた。
「オレの家」と確かに光はこう言った。
じゃあもしかして…
昨日の電話で予感はしていたけれど、まさか本当になるなんて…
ごくん、と息を呑み込むあたし。
光は慣れた手付きで部屋へと誘導する。
7階が光とあの人が住む部屋があるらしい。
怖いと言ったら嘘になる。
この日、初めて光の奥さんと顔合わせをした。


