ずっと一緒にいたかった…。
弱い体のあたしを許して。
あたしは千絵にとって、立派な母親だったかな?
…時は過ぎていく。
その速さは勝手なくらい速く、思い出までも消し去ろうとしていた。
千絵が生まれて三年が経つ。
光と出逢ってもう六年が過ぎた。
時が過ぎるのは速い。
思い出の中に残っている光は、まだ幼さを感じる。
あたしも幼かったけれど、成長したはず。
「全く、光くんは明菜をどう思っているんだ」
この言葉はここ数年の父親の口癖だ。
「迎えにくる」と約束したはずなのに、光はちっとも迎えには来ない。
仕事が忙しいのは分かる。
テレビや新聞でよく見るからだ。
文句は言えない。
言いたくない。
あたしのワガママも、言わない。
光はきっと迎えに来るわ。
だって、守れない約束はしないと言ったのだから。
「ママ、千絵、ツナカレーが食べたいよ。」
すると千絵があたしが着ていたワンピースの裾を引っ張り、こう言ってきた。
見上げる顔が光にそっくりで、あたしは光を抱きしめるように千絵を抱きかかえる。
「もう少しだから待っててね?」
あたしが今作っているものはツナカレーだ。
あたしの大好物でもあり、千絵の大好物だ。
慣れた手付きでカレーを仕込んでいく。
「はぁ…」
最近、ため息が絶えない。
気がつけばため息を漏らしている。
疲れているからなのか?
自分でも分からない。
この生活に限界がきているからだろうか?


