「忘れるわけないよ…
明菜はオレにとって大事な女性だから…」
あたしは貴方のことを忘れる日はないでしょう。この子が貴方を思い出させるでしょう。
愛しているわ…ずっと。
「光、もう一度あたしにキスをしてください…」
これで最後のキスとなっても、悲しくはない。
貴方に愛されて日々は、あたしの体が覚えているから。
さようなら、光。
貴方と出逢え幸せすぎました。
「必ず迎えに来る…」
光はこう最後に言って、あたしの前から姿を消した。
光がいなくなってからの日々は、つまらないという言葉に片付けられた。会社を産休という理由で辞め、あたしは育児に専念することにした。
両親は子供を産むことに納得してくれ、沢山協力をしてくれた。
そんな毎日が勝手に過ぎていく。
光はというと、選挙に立候補し、当選をした。
そのせいか、連絡は月に一度くらい。
けどそれだけで十分だった。
あたしのことを忘れていないのだと実感するから。
日に日にお腹は大きくなっていく。
そして休日になるとあたしはここに来ている。
貴方と約束したもの。
聴こえますか?
あたしは今日も貴方のことを想ってラブソングを唄っています…。
そして、翌年の春。
桜が咲き始めたころに、女の子を出産した。
名前は、千絵(ちえ)。顔立ちは、まだはっきりとは分からないが、どことなく光に似ている。
「貴方にそっくりよ。
光…」
立派な母親になりたい。そう、この子を抱いて思った。
けど、体の弱いあたしにとって、その夢は夢にしかすぎなかった…。


