その記事を見てあたしは何も思わなかった。
『別にいいじゃない』とこう心の中で呟く。
政治界なんて、あたしには遠い世界。
あたしの父は昔、外務省で働いていた。
毎日が大変そうで、やつれていった記憶がある。
そして、あたしが高校生になるとき、フィリピンでの任期が切れた。
しかしフィリピンが気に入っていた父は、そのまま外務省を退職してしまい、母とあたしを呼び寄せたのだ。
父を苦しめたのは政治界。
だからあたしは政治界を好きになれないのかもしれない。
マウスで源光の画像をクリックする。
大きく映し出される、光の顔写真。
これが、注目の的の人。
大きな瞳に、白い肌。
そして赤い唇。
笑うと歯並びのいい歯がちらっと見える。
その表情からは性格までも分かる気がする。
「…源、光ね…」
どうでも良かった。
だってあたしには、関係のないことなのだから。
時計の針は夕方の5時を示している。
あたしはパソコンの電源を切り、5時2分でタイムカードを押した。
今日の勤務終了。


