目を擦りながら、母を見上げる。
そこにはいつもと違う母がいた。
おろしたての服に、
少し濃いめのメイク。
そして薬指に光るリング。
どこか行くの?
「…どうしたの?今からどこかに行くの?」
「違うわよ!今からお客さんがくるの。ほら言ったじゃない!明菜も準備しなさい!」
ちょっと、ちょっと。
何でそんなにハイテンションなのよ。
お客が来るくらいでそんな格好しなくてもいいじゃない。
それに、口紅が歯についてるわよ?
「口紅、歯についてるよ。あたしは遠慮するわ。」
もうそんな時間か。
昼から二本の映画を観ていたら、それくらいの時間になるか…。
あたしの言葉を聞いた母は慌てて歯についた口紅を取っていた。
気づいてなかったみたいね。良かった。言ってあげて。
「明菜も来なさい。せっかくの食事会なんだから。来なかったら怒りますよ?」
眉間に皺を寄せ、睨み付ける母。
これ以上なにを言っても無駄だ。
あたしはため息を溢し、「分かった」と言って部屋のドアを閉めた。
嫌いなのよ、食事会。
部屋の電気をつけると、一気に部屋が明るくなる。
雨は、まだ降り続けていた…。


