「こんなのあたしらしくないわ…」
自分らしくないと思ったあたしは、ギターを弾くのをやめて、ぼんやり海を眺める。
ちょうどそのころ、暗い空から滴が降ってきた。
ぽた…ぽた…と地上を濡らしていく雨。
砂浜が水玉模様となる。
ゆっくりと空を見上げて確認をすると、やはり雨だった。
「降らないで…って言ったのに…」
唇を軽く噛み、空を睨み付ける。
空はあたしの存在を無視するかのように、降り続けた。
次第に強くなる雨。
もっと歌いたかったけど、これ以上歌い続けたら自分がおかしくなる。
ちょうど良かった。
降り始めるタイミングには感謝しなくちゃね。
「帰ろうかな…」
海にいた時間は少なかったけど、気持ちはいっぱいだった。
恋って…悪いものじゃないのかもしれない…。
そう、この海で学んだ。
ギターケースを抱えて、家路を急いでいく。
道には誰一人歩いていない。
慌てて洗濯物を運ぶおばあちゃんを目で追いながら、走っていく。
雨の中を…。
雨は嫌い。
だって貴方を思い出すから。


