「なによ、あの人…」
小さく言葉を漏らして、去っていく光の姿をずっと見つめていた。
見えなくなるまで、
ずっと…。
この弾む心臓はなに?
うまく息ができないのはなぜ?
やめて、どうして…
どうしてなのよ…
あたしは砂浜に視線を落とし、唇を噛み締めた。
そしてゆっくりと目を閉じる。
頭の中に蘇ってくる、あの人の笑顔。
「明菜」と呼んだ甘い声。
ずっと、ずっと残っている。
そしてもう一度逢いたいと思う自分もいる。
「…素敵な人だった…」
パソコンの画像で見るより、かっこ良かった。
左手の薬指を隠したことには疑問が残るが、そんなのどうでも良かった。
夢中になっていたのは、この時からだった。
それを証拠に、
あたしはギターを手にとり、再び自作の曲を弾き始める。
そしてさっきと同様、デラメな歌詞を唄う。
だが、歌詞がさっきまでと違っていた。
それが夢中の証拠。
だって…自分で気づいてしまったの。
今唄っていた歌詞の内容は、あの人に出逢った時の心境だから…。
赤く染まる頬。
高鳴る鼓動。
息詰まる呼吸。
全部、全部…
あなたに出逢ってからのこと。


