ついつい笑ってしまった。
あたしが唄っていた歌詞は、全部デタラメ。
最初からあった歌詞ではない。
その時の心情がそのまま歌詞になっているだけだ。
まとまりのない歌なのよ。
それを光はいい歌詞だと言った。
その言葉も計算なの?
「デタラメ…?嘘だろ?」
驚いた表情を見せる光。
「嘘じゃないわよ。ほら、今日の手持ちはギターだけでしょ?暗記なんか出来ないわ」
ギターケースを指差しながら、笑って言う。
証拠を見せると光は納得したように頷いた。
「じゃあ余計すごいな!尊敬するよ」
「…あたしはあなたに尊敬するわ。未来の有望者だもの。…でもなぜここに?」
ずっと気になっていた。光が現れてから。
なぜスーツ姿で浜辺になんかいるの?
それに、今は週刊誌で話題にもなっているのに。
「今日からちょっとこっちで修行をするんだ。政治の。ここにさ、親父の実家があって」
「ふーん、そうなの」
「そうなんだ。あ…やば。もうすぐ昼だね。」
腕時計を見ながらこう言って、その場に立ち上がる光。
スーツには砂が沢山ついていた。
「砂、ついてるわよ?」
「あ、本当だ」と言いながら光は砂を手ではらっていた。
「もう行かなきゃ。また…聴かせてよ。オレ、君の歌声に惚れちゃった。」
「え…」
「じゃあね、明菜…」
あたしは…
恋に溺れていった。


