なぜ隠したのか、
なぜ隠そうとしたのか。
あたしには全く分からなくて、この行動が光の優しさだとは知るはずもない。
「あたしの名前は…」
光の左手の薬指を見ながらあたしは言葉を漏らす。
自己紹介をしようとしていると自分でも分かる。
いつもなら無視をするはずなのに、いつものあたしなどここには存在しなかった。
「ん?」
「あたしの名前は明菜よ…」
こう名前を言うと光は更に眩しい笑顔を見せた。
その笑顔反則だよ…。
「明菜っていうんだ。可愛い名前だね。それに顔も可愛いし」
「冗談はやめてよ。それにおかしくない?なんで休日なのにスーツなんか着てるのよ。もしかして謝罪会見とか?」
意地悪っぽく言ってみるあたし。
なんて反応するか楽しみだけど、言ったあとに後悔をする自分もいた。
光には奥さんがいる。
それもとびきり美人の。何度か週刊誌で読んだことがある。
けど、光は浮気をした。
どうして浮気をするの?って記事を見ながら思っていた。
もし理由があるなら聞いてみたい。
ちらっと光を見ると、悲しそうな瞳で海を見つめていた。
非常識なことを聞いてしまった…。
「ごめ…」
「オレはあの人を愛したことを後悔してないよ」


