風が強く吹く。
騒ぎ出す波。
嵐の前触れだろうか?
目の前に現れる、
どこかで見たことのある人。
どこだったかな?と必死に思い出すのだけど、なかなか見つからない。
綺麗な瞳があたしをおかしくさせる。
固まってしまって、指が動かない。
先ほどまで唄っていた歌詞が急に分からなくなる。
どうして?
あたしはゆっくりと息を飲み込んだ。
「…どうかしたの?」
「え……」
これ以上言葉にならなかった。
言葉がでない。
考えられない。
だって、貴方が美しすぎるから。
これが、貴方との出逢いだった。
この出逢いはあたしが作ったようなもの。
この時間に唄いにきて、ここに座って、貴方に話しかけられて。
貴方は悪くないよ。
あたしが悪いのよ…。
「隣いいかな?」
いつものあたしなら、「砂浜は広いのだから違うとこに座ってよ」と言って、相手を悲しませるだろう。
けど、今のあたしには無理なこと。
固まっていて、首を縦に振ることしかできない。
「ど…うぞ…」
「ありがとう」
また、眩しい笑顔。
良かった、今日は太陽がなくて。
この人の笑顔は太陽のようだから。
「歌手志望とか?綺麗な歌声だし、歌詞もいいし。聞き入っちゃった。いい歌だね」


