このギターはあたしが高校生のときにバイトをして買ったものだ。
自分が働いて得たお金で初めて買ったもの。
だから余計愛着が湧くのかもしれない。
そっとギターに触れるあたし。
今日も唄いに行く。
あの海へ。
「じゃあ行ってきます。」
「気をつけてね。雨が降るまでには帰ってくるのよ?今日はお客さんが来るんだから」
…そっか。忘れていた。お父さんの知り合いの人が来るんだっけ。
だからトイレットペーパーがピンク色だったのね。
忘れてた。
「あたしいなくてもいいんじゃない?関係ないわよ」
履き慣れたスニーカーを履きながら、こう言う。
「明菜、夕方までには帰って来なさい」
すると、突然父の声が聞こえてきた。
その声になぜかびくりと反応をしてしまう。
あたしの言葉、聞いてた?
「…気が向いたらね。」
ギターケースを手にとり、家から飛び出した。
食事会とか、合コンとか、苦手なのだ。
作り笑いをして何が楽しいのよ。
そんなの、息が詰まるだけ。
濁った空の下を歩く。
30分くらい歩いたら、
もう見えてくるはずだ。
「やっぱり…」
この空の下だから、海も汚れているのかな。


